診療のご案内(患者の皆様へ) 膠原病に伴う肺高血圧症について Connective tissue disease related pulmonary hypertension

ここでは、膠原病に伴う肺高血圧症について詳しくご紹介いたします。

肺高血圧症とは

人体では、肺で酸素と二酸化炭素の交換を、心臓で全身と肺への血液の送り出しをしています。特に、全身を回って酸素が消費され、二酸化炭素を回収してきた血液は、ガスの交換をしてくれる肺に心臓を使って送り込まれる必要があります。心臓から肺へ向かう血管は1本しかなく、「肺動脈」と呼ばれます。

この1本しかない肺動脈という血管が、何らかの原因によって中が狭くなるとその部分の圧力が高まり、血液が通りづらくなります。一定以上肺動脈の圧が高まった状態を「肺高血圧症」といいます。皆さんがよくご存知の高血圧は体中の血管の圧が高まった状態ですが、肺動脈に限っては肺高血圧症と呼びます。

肺高血圧症になると心臓の右側がいつも以上にがんばってポンプ役を担うことになりますが、そのような状態が続いたり、程度が強くなると心臓もさすがに疲れてきてしまいます。このように心臓のポンプの力が弱まってきた状態を(右)心不全と呼びます。こうなると危ない状態です。もっと前の、初期の段階から診断、治療を受ける必要があります。

肺高血圧症は、動くと息切れがする、動悸がする、両足がむくむようになった、というような症状で気づかれます。程度が強い場合は、意識を失うこともあります。以前に比べてこのような症状に気づきましたら、専門病院を受診されることをお勧めします。

肺高血圧症は、肺動脈だけに病気が存在して発症するものから、心臓の筋肉や肺の病気など他の影響から発症するものまであります。肺動脈が主体の場合を「肺動脈性肺高血圧症」といいます。2000年までは有効な薬剤はありませんでしたが、2000年以降、肺動脈を拡げる作用をもつ薬剤が次々と開発され、自覚症状、検査データ、生存期間を大幅に改善するようになりました。

膠原病と肺高血圧症

膠原病は、肺、腎臓を始め、全身の内臓に症状が及ぶことがあります。その中で、心臓に負担をかける肺高血圧症は最も重いものの一つです。肺高血圧症だけでも専門医による診療が必要ですが、膠原病が関連すると、そちらにも配慮した治療方針を立てる必要があります。心臓を専門とする循環器内科と、膠原病を専門とする膠原病内科の両方の科がある病院、あるいは循環器内科のある病院と膠原病内科のある病院を2つ、受診していただくのが望ましいです。

私たちの膠原病に伴う肺高血圧症への取り組み

(1)診療面

循環器内科に息切れで受診し、先に肺高血圧症と診断された患者さんをご紹介いただいたり、当科に通院中の膠原病の患者さんの経過中に肺高血圧を発症した場合に、膠原病に伴う肺高血圧症としての診断、評価、治療を行います。当院では循環器内科の心不全グループと連携し、万が一重症になった場合は心臓血管集中治療科にも連携を依頼します。

(2)肺高血圧症患者症例登録研究(JAPHR (Japan PH Registry)への参加

一人ひとりの患者さんを丁寧に診療していくのと同時に、現在わが国全体における診療実態を明らかにし、診療内容の向上につなげていくことも必要です。そのためには、日本の患者さんの大規模なデータが必要です。肺高血圧の研究・診療・教育を牽引していく組織、日本肺高血圧・肺循環学会では、患者さんの個人情報が特定されないようにした上でデータを登録する制度があります。これはJAPHR(https://japanph.com/ph/JAPHR_JRPHS/)と呼ばれ、当施設も参加しております。現在通院されている方、今後当院の受診を考えている方は、ぜひご協力をお願いいたします。

(3)治験への参加

現在、膠原病に伴う肺動脈性肺高血圧症に対する新薬の臨床試験に参加しております。ご興味ある方はご連絡ください。